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2017.05.17
相続で預貯金が「遺産分割」の対象となるかどうかが争われた審判の許可抗告審で、最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は平成28年12月19日、「預貯金は遺産分割の対象」とする初判断を示し、改めて相続分を決めるために、審理を大阪高裁に差し戻しました。不動産や現金が遺産分割の対象なのに対し、預貯金は「遺産分割の対象にならない」と解釈されてきましたが、判例を変更したかたちです。
その理由としては、
(1)「遺産分割においては被相続人の財産をできる限り幅広く対象とするのが望ましく、また、遺産分割手続を行なう実務上の観点からは、現金のように評価についての不確定要素が少なく、具体的な遺産分割の方法を定めるに当たっての調整に資する財産を遺産分割の対象とすることに対する要請も広く存在する。…具体的な遺産分割の方法を定めるに当たっての調整に資する財産であるという点において…預貯金が現金に近いものとして想起される。」
(2)「普通預金債権及び通常貯金債権は共同相続人全員に帰属する…ところ、…上記各債権は口座において管理されており、預貯金契約上の地位を準共有する共同相続人が全員で預貯金契約を解約しない限り、同一性を保持しながら常にその残高が変動しうるものとして、存在し、各共同相続人に確定額の債権として分割されることはないと解される。」
(3)「定期貯金についても、…契約上その分割払戻しが制限されているものと解される。」などと判示しました。
銀行等の実務としては、預貯金が遺産分割対象となると、各相続人からの法定相続分に基づく払戻しについては、今後は、応じなくなることが予想されます。そうすると、遺産分割終了まで、預貯金が凍結されてしまうことが考えられます。
預貯金について、早期の現金化を可能としたいのなら、遺言書の作成をしておいて、遺言執行として受け取ることとするか、あるいは、遺言代用信託の設定、生命保険契約の締結等の事前措置をしていて、実質的に現金を取得することとするかなどが今まで以上に必要なものとなってくることが考えられます。
遺言、遺産分割協議についての相談は弊社まで。